古都の名残を求めて

古都の名残を求めて

古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

秋篠川から望む薬師寺のツインタワー

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秋篠川から望む薬師寺の東塔と西塔

薬師寺から唐招提寺へ向かい、南大門を過ぎてさらに東へ進むと秋篠川に出る。この川は、あまり大きな川ではないが、奈良市内の大渕池を源流に大和郡山市へと流れ、佐保川に合流している。秋篠川から薬師寺の方へ目を向けると、東塔と西塔が遠景に浮かんでくる。古代のツインタワーは、昔なら相当目立つ建造物だったに違いない。今は民家や電柱や電線などが入ってしまい、その姿は上層部分しか拝めない。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summicron 50mm f/2(4th)。

 

洋書『LEICA&LEICAFLEX LENSES』を購入

先日、『LEICA&LEICAFLAX LENSES』というライカのオールドレンズに関する洋書を購入した。この本は、どこだったか、中古カメラ屋を巡っている中で見かけた本で、何だかよさげな本だと思っていた。実際手に取ってみると、全て英語で書かれている点を除けば、なかなか内容的には優れた書籍だと感じる。今回紹介するのは、エルマリートC40㎜ F2.8レンズについての記述である。この不運なレンズについては、以前記事に書いた(「不運なレンズ、エルマリートC40mm」)。この書籍には、知りたかったエルマリートC40㎜ F2.8のレンズ構成図や知らなかったこのレンズについての情報が載っていたので購入して良かった。

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『LEICA&LEICAFLAX LENSES』の表紙

表紙はこのような感じで、いかにもライカのレンズについて詳しそうな印象を受けるし、デザインも良いと思う。

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『LEICA&LEICAFLAX LENSES』よりLeitz Elmarit-C 40mm f/2.8部分の記述

写真はエルマリートC40㎜ F2.8についての記述のページ。以下、この本からの引用で英語を和訳している(ただし、少しあやふやな訳の部分もあるのでご勘弁願いたい)。

 This almost unknown lens is a classic for collectors just like a unique stamp. It was designed at the start of the CL camera programme, in order to keep the price of the basic equipment(camera and lens)as low as possible. It was a good lens performance wise, also considering the fact that its dimensions had been kept to a minimum.

 As the development of the camera went on, it was decided that the body was to built by Minolta in Japan, and the lens could(and should)be a more expensive one; this give origin to the Summicron-C.

 このほとんど知られていないレンズは、珍しい切手のようにコレクターにとってクラシックな(定番な)ものです。これは、基本的な機器(カメラとレンズ)の価格を可能な限り低く抑えるために、CLカメラ(Leica CL)プログラムの開始時に設計されました。 寸法が最小限に抑えられていることも考慮して、レンズの性能は良好でした。カメラの開発が進むにつれ、ボディは日本のミノルタによって製造されることになり、レンズはより高価なものになる可能性があります(そしてそうあるべきです)。これがズミクロンCの原点です。

 Meanwhile some 400 units of the Elmarit-C had been programmed and serial numbers allocated(from 2.512.601 to 2.513.000); a typical Elmar design with four elements with a cemented pair at rear this lens apparently was stopped in its tracks and should not have found its way into the sales organisation: however it is known at least one customer got a Leica CL camera with the Elmarit-C 40mm lens mounted in place of the standard Summicron-C 40mm; thus we know that the code number of this lens should have been 11541, but it was never mentioned in the catalogues.

 Set in a black focusing mount it could be focused to 0,8 metres or 32 in. and closed to f22; at the minimum focusing distance it covered a field of 25” × 17” or 650 × 434mm.
Most of the lenses made were sold to people inside the Leitz factory during or after 1973. Apparently the lens does not have a lens hood of its own although its design suggests the use of the Summicron rubber hood.

 その間、Elmarit-Cの約400ユニットがプログラム化され、シリアル番号が割り当てられました(2.512.601から2.513.000まで)。 後部に接合されたペアを備えた4つのエレメントを備えた典型的なエルマーのデザインは、明らかにそのトラックで停止されており、販売組織に入るはずがありませんでした:ただし、少なくとも1人の顧客が、標準のSummicron-C40mmの代わりにElmarit-C40mmレンズを取り付けたLeica CLカメラを入手したことがわかっています。 したがって、このレンズのコード番号は11541である必要があることがわかりますが、カタログには記載されていません。

 黒のフォーカシングマウントにセットすると、0.8メートルまたは32インチにフォーカシングでき、(絞りが)f22までとなっている。最小焦点距離では、25インチ×17インチまたは650mm×434mmのフィールドをカバーしました。製造されたレンズのほとんどは、1973年以降にライカ工場内の人々に販売されました。どうやらレンズには独自のレンズフードがありませんが、そのデザインはズミクロン(Cレンズ)のゴム製フードの使用を提案、促しています。

この記述を訳してみて、気付いたことがある。Elmarit-C 40mm f 2.8のレンズ4枚構成が大変Elmar 35mm f 3.5に似ているということである。また書籍に書かれているスペックを比較してみると、

・Elmar 35mm f 3.5レンズ

画角:64°  レンズは4枚構成 最小焦点距離:1m  最小絞り:18

・Elmarit-C 40mm f 2.8 レンズ

画角:57°  レンズは4枚構成 最小焦点距離:0.8m  最小絞り:22

となっている。4枚のレンズの形状やその間の距離がそれぞれ多少違っているが、レンズの配置についてはよく似ていることが分かった。同じパンケーキレンズという点も酷似している。Elmarit-C 40mm f 2.8レンズはElmar 35mm f 3.5レンズをもとに製作されたと予測できるかもしれない。しかも80センチまで寄れるところもこのレンズの良い点である。フードがオリジナルのものがなく、後からつくられたSummicron-C 40mm f 2のラバーフードを代用している点も勉強になった。この本を買って良かったと思う。さらに他のレンズについても読み込んでいきたい。

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宅飲み(その4)

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旨口の日本酒『猩々』と豚しゃぶとお豆腐で宅飲み

今週のお題は「雨の日の過ごし方」。雨の日は、家で過ごす時間が増えてしまう。好きな写真撮影にこのところ中々行けないのがもどかしい。最近では、もはや花金という言葉は何処へやら。僕自身、飲み会は昨年の奈良でのコロナ感染の始まり以降、全く行っていない。あの時は、奈良公園から人が一斉にいなくなって、今ではそのことも懐かしい感じになりつつある。週末の夜は、宅飲みで楽しむこの頃。日本酒は奈良県吉野町の北村酒造『猩々(しょうじょう)』(吟のさと)。能の演目「猩々」が由来のお酒。「猩々」とは、酒を飲んで波間に戯れ、舞を舞う妖精のこと。「猩々」のストーリーについて、以下『能鑑賞二百一番』から引用する。

中国の金山の麓、揚子の里に住む高風(こうふう)という孝行息子は、夢の告げを受けて市場で酒を売り、金持ちになったが、いつも必ずやってきて酒を飲んでいく客がいた。高風が客に名を尋ねると、男は水中に住む猩々だと答え、水辺で待てと言って消える。高風は酒壺を用意し、潯陽江のほとりにやってきて猩々の出現を待つ。やがて猩々が波間から浮かび上がり、酒を飲んで水上をたゆとうように波を蹴って舞を遊ぶ。そして高風の親孝行を褒め、いくら酒を汲んでも酒が尽きることがない不思議な酒壺を高風に与えて消え去った。

このストーリーを頭に巡らせながら飲む『猩々』は実に縁起の良いお酒と感じてしまう。因みに北村酒造は天明八年(1788年)の創業。歴史ある酒蔵である。「吟のさと」は、吉野町特有のお米。あては豚しゃぶに北海道産「とろける生とうふ」。日本酒に合う組み合わせ。週末もまたほろ酔い気分で過ごす。

雨の薬師寺中門と階調表現

雨の日に撮影した薬師寺中門。石階段が夕刻の淡い光に反射して美しく見えた。奥には南門が写っている。500pxにこの写真を投稿して、あるフォトグラファーにコメントをいただいて気付いたのであるが、石階段の白黒の階調が少しずつ変わってきていることが分かる。門をまたぐ部分には雨滴が落ちていないので、乾いた石畳である。しかし手前に来るほど、雨で濡れている部分が増えてきて、グレーの階調が高くなっている。このグレーの微妙な範囲を細かく表現できるのが、ライカMモノクロームというカメラなのだと認識できた。印画紙に手焼きする場合を考えると、まずは0号フィルターで少し焼いて、後から5号フィルターで焼く感じに似ている。手前の石階段の黒は、5号フィルターでさらに焼き込みした感じである。その黒も潰れていない。ライカMモノクローム、これは凄いカメラである。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summicron 50mm f/2(2nd)。

薬師寺東院堂前のおみくじ

薬師寺東院堂は、以前このブログで紹介したことがある。ここではおみくじを引くことができる。そのおみくじを結ぶ習慣が日本にはある。少し調べてみたら、以下のサイトに答えがあった。太宰府天満宮の神職さんからの回答を引用する。

特に決まりはございません。「おみくじ」とは、ご自分の吉凶を占うもので、「おみくじ」に書かれた内容は、神様からのお言葉とされています。「結ぶ」という言葉は、「神様とのご縁を結ぶ」など神社では縁起の良い言葉とされていますが、日々の指針として大切にお持ち帰りになっても構いません。 

 ということである。つまり結んでも、持って帰ってもどちらでも御利益があるようである。写真は結ばれたおみくじを雨の中撮影したものである。滴る雨水が印象的であった。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summicron 50mm f/2(2nd)。僕の使っている製造番号なし2ndズミクロン、ライカMモノクロームとの相性が良いと思う。このレンズ70㎝まで寄れるのがいい。

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薬師寺東院堂前のおみくじ

宅飲み(その3)

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春雨とパクチーのサラダと茹で鶏で宅飲み

今週のお題は「やる気が出ない」。この頃は外へ行くこともままならず、好きな写真撮影も控えていて気持ちが前向きにはならない、やる気が出ないご時世である。しかし、かつて奈良時代もそうであったように、疫病の流行時は、外出を控え、家族でも大皿で食事をつつき合うのはやめて、小皿に分けて食べていたということが、考古学的な発掘で分かっている。先人たちも、ワクチンなどがない中で色々と頭を使って感染対策を実施してきたのだと思う。そして今の時代がある。

家で過ごす時間が長くなる分、おうちで楽しめる宅飲みがいいと思っている。今回もお気に入りの日本酒で居酒屋風に飲んだ。近鉄筒井駅すぐにある川合酒店さんの日本酒『順慶』。奈良桜井の今西酒蔵で作ってもらっているというオリジナルの地酒だそうである。もちろんここでしか手に入らない。『順慶』とは、大和の戦国大名であった筒井順慶のこと。あては春雨とパクチーのサラダと茹で鶏。グラスと酒枡には「鳥獣戯画」が描かれていて気に入っている。

筒井順慶といえば、昨年話題となった明智光秀を主人公とした大河ドラマ『麒麟がくる』で俳優の駿河太郎さんが筒井順慶役を演じていた。松永久秀を演じる吉田鋼太郎さんとの共演シーンが僕は印象に残っている。大和の支配をめぐる駆け引きの面白いシーンであった。さらに、藤沢周平の小説『逆軍の旗』で描かれる筒井順慶はもっと印象的である。信長を本能寺の変で討った光秀に対し、旧友の細川藤孝(のちの幽斎)はすぐさま信長に弔意を示すため出家した。また家督を息子の忠興に譲って隠居するという形を取った。つまり光秀に組しないという暗黙の宣言であった。残るは筒井順慶。光秀は最後まで順慶の援軍に期待をしていた。しかし、目の前には、信長の訃報を聞いた羽柴秀吉軍が、毛利方と和睦を結んで急遽引き返しすでにそこまで迫っている。しかし、順慶は最後まで動かない。光秀に対して迷っているように見せつつも返事をせず全く動かなかった。このあたりの順慶や藤孝の心の機微が読んでいて面白い。

ちなみに筒井町や筒井駅の名称の由来は、筒井順慶からではなさそうである。以下は~tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」~の記事からの引用である。参考になった。

よく「筒井順慶(筒井氏)がいたから、筒井という地名ができたのですか?」と聞かれるが、その逆で《「筒井」は室町期からみえる地名で(中略)「ツツ」は井戸の形態をいったもの。一般的には姓氏よりも地名が先に生まれたと判断される》(「筒井」池田末則編『奈良の地名由来辞典』)ということだ。

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ガラスへの映り込みとモノクローム写真

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ガラス戸への映り込み

ライカMモノクロームを導入して一か月が過ぎた。このカメラの扱いには少し慣れてきた。ただ、適正な露出で写真を撮ることがまだまだできていないと自分では感じている。量をもっと撮らないと感覚がつかめてこないと思っている。最近は撮影に行けない我慢の日々が続くが、ここはしばらくの辛抱である。自ら人の集まるところへ出かけて感染してしまっては家族に迷惑をかける。それだけは避けたい。

モノクローム写真の中で、僕はガラス戸への映り込みが好みである。写真は薬師寺勧進所のガラス戸への映り込みであるが、前回の記事と違って、ここでは、薬師寺境内の外壁の土壁が映っている。勧進所内の写経などに使う長机との重なりが面白い。今は誰もいない時期なのでこのように撮れたが、ここはよく法話の会場となっているので、普段は多くの人が出入りしてあまりゆっくりと撮影ができないところである。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summicron 50mm f/2(2nd)。

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薬師寺東塔南側の側面

薬師寺東塔は「三重塔」である。しかし、どうみても六重塔に見える。例えば興福寺の三重塔は、まさに見たままの屋根が三つの三重の塔である。この稀に見る巨大な三重塔は三つの裳階を加えることで、より美しく見えるよう考えられている。古代の人々は、いったいCADなどのソフトがないのにどうやってこのスケールの大きな空間のデザインをしたのであろうか?大変興味深いところである。しかもこの東塔は、地震に強い超免震構造となっている。大きな揺れには、心柱を中心に思い切り塔を揺らすことによりその衝撃をうまく逃がせる構造になっている。随所に使われている古代和釘というのもよく考えられていて、木の伸縮により全く釘が抜けないように計算されている。先人たちの知恵は想像を超える凄みがある。写真は薬師寺東塔を南側から見たものである。どのパーツをとっても美しいと感じてしまう自分がいる。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summicron 50mm f/2(2nd)。

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薬師寺東塔の南側側面

宅飲み(その2)

今週のお題「おうち時間2021」。新型コロナウィルスの感染が収まらない中、巣ごもりの日々における楽しみの一つ、前回に続き宅飲みの第二弾を記事にする。僕は日本酒が好きで、お酒の中でも最も嗜んでいると思う。何といっても和食に合うというところが良いし、奈良県は伏見や灘と同様、古くからの酒処であること、酒蔵の歴史が長く地酒の種類が多いところが良い。唐招提寺から歩いてすぐのところに奈良大和の地酒専門店である西の京地酒処の「きとら」という酒屋があり、そこでは、奈良の地酒がほとんど用意されている。他店ではなかなか手に入らない地酒もこの酒屋にいけば必ず置いてあるというぐらいの老舗である。

今回は、前回の「御代菊」という地酒とは違って、奈良ではメジャーな豊澤酒造の「無上盃」を購入した。海老寿司と枝豆はスーパーで買って日本酒のあてにして飲んだ。日本酒と寿司はとても相性がいい。徳利もお酒が進むようなデザインで大変気に入っている。奥には、家族に食べるように勧められたサラダがある。野菜もしっかり食べねばと思う。

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海老寿司と枝豆と日本酒で宅飲み

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薬師三尊像のうち薬師如来像

薬師寺金堂には、薬師三尊像が鎮座する。三つの著名な仏様のうち、今回の写真に載っているのは、中央の薬師如来像である。その巨体からしても御利益のありそうな仏様である。写真が外からしか撮れないので、薄っすらとしか仏様の顔が拝めない。

薬師寺の僧たちの法話の中で面白くて印象に残っている話が、この薬師三尊像を、医師と看護師に例えるというものである。中央の薬師如来像は医師、両脇に控える日光菩薩像と月光菩薩像は看護師とされ、日光菩薩像は日勤の看護師、月光菩薩像は夜勤の看護師とされ、常に24時間体制で三尊像が私たちの健康を見守ってくれているということであった。白鳳時代からの歴史ある仏様たち、新型コロナウィルスの感染が止まらない現状から是非とも私たちを感染から守り、ずっと看ていてほしいものである。写真の下の外部リンクは西山厚教授によるよもやま話である。内容はとても興味深い。

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薬師寺金堂の薬師如来像

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