古都の名残を求めて

古都の名残を求めて

古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

新年の斑鳩法起寺の三重塔

法起寺三重塔と冬の青空

明けましておめでとうございます。このブログの更新も久々になってしまいました。今年の抱負は、よりモノクローム写真を好きになること。斑鳩をはじめ、古都奈良の名残を求めていきたいと思っている。

新年のスタートは、法起寺三重塔から。12月~1月の太陽光はとても優しくて写真を撮影するには最適な時期だと感じる。斑鳩三塔の一つである法起寺のこの塔は、周りが田園地帯なため、遠景を撮るにもいい場所であり、塔そのもののシルエットが美しく、法隆寺五重塔を超える美しさを個人的には感じる。青空との掛け合いはモノクローム写真にマッチしていると思う。本年もこのブログをよろしくお願いいたします。

撮影機材:撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Leitz Summarit 50mm f/1.5

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心に「うるおい」を与える法隆寺金堂四天王像

今週のお題は「うるおい」である。僕にとって心を癒される場の一つに法隆寺がある。飛鳥時代の建造物がそのまま残る寺院であり、先人たちの素晴らしい技術を感じずにはいられない空間である。特に興味深いのは法隆寺金堂である。建築様式は法隆寺境内の中でも古く、二重基壇の上に建物が建てられているのも飛鳥時代の大きな特徴である。金堂内には著名な釈迦三尊像が中央に鎮座し、アルカイックスマイルで参拝者を出迎えてくれる。さらに四隅には四天王像が並ぶ。個人的にはこの四天王像に最も興味を惹かれ、また参拝していて心の「うるおい」を感じる。

法隆寺境内の回廊から見た金堂

法隆寺金堂の四天王像は、現存する日本最古のそれであり、4体とも頭と体を通してクスノキの一本造である。頭にはそれぞれ豪華な宝冠が付けられている。東大寺戒壇院などで見かけるその他の四天王像がそれぞれ個性的な表情を見せるのとは違い、法隆寺金堂の四天王像は4体とも直立し、眉をひそめ、口を閉じていて無表情に近い。また、4体とも手首を紐で縛る特殊な姿をしていて、他に例を見ないスタイルである。

法隆寺中門と雨に濡れた松の木

その他、僕自身が最も注目するのは、四天王像それぞれの足元に存在する邪鬼である。他の四天王像の場合、邪鬼は踏みつけられていて、苦痛な表情をしている。ところが法隆寺の邪鬼は少し雰囲気が異なる。持国天の足元の邪鬼は牛のようである。また増長天の邪鬼は一角獣のようでもある。踏まれている感じもなく、四天王を乗せている感じの印象で面白い。上宮王家の人々は、どういった思いでこの四天王像を造らせたのだろうかと不思議に思う。およそ邪鬼という感じがしないし、四天王像それぞれが踏みつけている感じでもない。四天王たちの持ち物もスケールの大きいものが多く、この部分もよく観察してみると興味深い。

心にうるおいを持たらす古刹の法隆寺西院伽藍。中でもあまり知られていない金堂の四天王寺像に関して触れてみた。

撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Leitz Xenon 50mm f/1.5

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Leica Xenon 50mm f/1.5レンズとスタイリッシュなフード

Leica LMM(Typ246)+Leica Xenon 50mm f/1.5とHector 73mm f/1.9のフード

久々にLeica Xenon 50mm f/1.5レンズを持ち出して法隆寺を撮影した。この日は雨が降ってきて、いつもとは少し違う雰囲気の写真を撮ることができた。Xenon 50mm f/1.5レンズには高価なフードが用意されているが、Leica Hector 73mm f/1.9レンズのフードが使える。一枚目の写真は、Xenon 50mm f/1.5レンズにフードを装着したところである。このフード、ピッタリとレンズに嵌まるのだが、そのままではおそらく撮影中に外れて落ちてしまう緩さである。今回は、黒のパーマセルテープを使ってしっかりと固定した。これであれば撮影中にフードを落とすことはなかった。

雨の日の法隆寺境内にある松の葉

実際に境内で松の葉を撮影したシーンである。Hector 73mm f/1.9を装着すると併用できるとされるSummarit 50mm f/1.5レンズの重たい真鍮のフードよりスタイルも良いし、使い回しも手軽で良い。

法隆寺境内の弁天池にて撮影

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小川晴暘のモノクローム写真作品:「ちょっとした夢」

奈良県庁前で芝を食べる鹿たち

 

今週のお題「ちょっとした夢」。

少し前に久々に写真展を観に行ってきた。場所は奈良県立美術館で、あまり混むことがない穴場の美術館である。この近くには、奈良県庁がある。一枚目の写真は、奈良県庁前で芝をゆったりと食べている牡鹿を撮影したものである。この県庁と県道を挟んで奈良公園と興福寺がある。不定期ではあるが、奈良公園の鹿たちは、芝を求めて県道を渡り、県庁へやってくる。今回は偶然その時間帯に鹿たちにここで出会えて写真が撮れた。

小川晴暘のモノクロームを中心とした写真作品展

飛鳥園とは、大正11年(1922年)に朝日新聞社に在籍していた写真家、小川晴暘が会津八一の熱心な勧めを受け、仏像など文化財の撮影を行うため創業した写真店である。その後『室生寺大観』『法華堂大観』などを発刊し、著名な写真作品を残してきた。この写真展で最も印象に残ったのは、写真家小川晴暘が撮影した法隆寺百済観音の右手を撮影した作品と東大寺法華堂の伝月光菩薩像の全身を写した写真の二作品であった。

奈良の写真家と言えば入江泰吉が有名であるが、個人的には、小川晴暘のモノクローム仏像写真の方がずっと好みである。小川晴暘は仏像を撮るときに、鏡を巧みに使い、仏像の陰影を太陽光で撮るようにしていた。後年の写真家は、電球によるライティングが多く、太陽光の淡く柔らかい陰影には勝てないと感じる。伝月光菩薩像や新薬師寺金堂の十二神将・伐折羅大将像の顔をアップにして撮ったポートレート?も大変表情が美しく、陰影もバランスが良く印象深い。自然な太陽光の成せる業だと思う。自分のちょっとした夢は、小川晴暘のような太陽光を使った仏像写真をいつか撮ることである。実現しそうにはないが、気持ちだけでもモノクローム写真をコツコツと撮り続けることである。

現在この時と同じ内容の写真展「小川晴暘と飛鳥園 一〇〇年の旅」が、東京の半蔵門ミュージアムで11月24日(日)まで開催している。お勧めの写真展である。

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法隆寺西院伽藍中門の構造を考える

法隆寺西院伽藍中門にて撮影

法隆寺中門は構造的には珍しく、門のど真ん中に巨大な柱が立っている。かつては法隆寺を参拝するときには、中門から入っていたようである。現在は回廊の最も西側に拝観料を支払う場所があり、そこから境内に入っていく。現在の拝観料は西院伽藍・大宝蔵院・東院伽藍の三カ所がセットで1500円である(一般1,500円 / 小学生750円)。これが令和7年3月1日よりの拝観料金改定が行われる予定で、個人料金(1名に付き)大人・大学生・高校生 2,000円となる。また中学生 1,700円 / 小学生 1,000円となる。法隆寺は飛鳥時代の貴重な建造物や仏像が多いので、貴重な寺院というのは分かるが、改定される拝観料は大変高額と感じる。今後は、撮影を控えていくしかないだろう。

法隆寺西院伽藍中門と中央の柱

さて、中門の構造の話に戻るが、二枚目の写真にあるように、中門の姿は壮大で美しい。またエンタシスの柱で有名な場所であり、上層には法隆寺金堂と同じ卍崩しと人字型の割束を構造を持った高欄を備えている。建築家の武澤秀一氏の著作である『法隆寺の謎を解く』を読んだときに、梅原猛氏の『隠された十字架』で指摘された「なぜ法隆寺の中門には真ん中に柱があるのか」について、建築家の立場からユニークな論説を展開されていて興味深かった。『隠された十字架』では、「法隆寺中門の真ん中の柱は怨霊を封じこめている」という説が唱えられていて、この説も興味深い。

仮に中門をくぐって、境内に入ろうとしたとき、中央の巨大な柱(写真の楕円で示した部分)は邪魔と感じるかもしれないが、武澤秀一氏が語るように、空間を二つに分けていると考えると少し説得力があるような気がする。梅原猛氏の説も上宮王家の悲劇を考えれば、そうかもしれないと思う部分もあるが、恐らく建築上の理由でこのような構造になったのではと拝観していて個人的には想像する。中央に巨大なエンタシスの柱を配置したことで、地震による大きな揺れに強いと感じる。既に法隆寺五重塔の軟構造が地震による大きな揺れに強いということが証明されているので、この中門も恐らくそういった要素を組み入れながら建立したのではないだろうか。最新の研究では、現在の法隆寺西院伽藍が、創建法隆寺(若草伽藍)と同時に並立していたと考えられているので、より災害に強い構造にしていることは想像に難くない。

撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+HELIAR 40mm F2.8 Aspherical

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法隆寺と夏雲: HELIAR 40mm F2.8 Asphericalレンズの魅力

HELIAR 40mm F2.8 Asphericalレンズの外観

撮影に使うレンズでは、40mmという画角が個人的には35mmより好みである。レンズスタイルが、ライカのオールドレンズのようだと前回の記事で触れたコシナのHELIAR 40mm F2.8 Asphericalレンズだが、第一印象は、ライカスクリューマウントのズマロン35mmf/3.5の前期レンズに似ていると思う。そのレンズがブラックペイントになったという感じである。

先日の台風10号が関西方面へ接近する少し前に法隆寺へ訪れた。台風前のためか夏雲のスケールが半端なく、モノクローム映えした写真の撮れた一日であった。二枚目の写真が法隆寺五重塔と夏雲である。

法隆寺五重塔と夏雲

法隆寺五重塔は、そのシルエットが薬師寺の三重塔とは違って、オーソドックスなスタイリングである。しかし、下層から上層へ向かう屋根のラインが美しく整然としている。見上げた時の圧倒的な存在感には、このラインの美しさも影響しているかもしれない。今回の写真では、雲の奥行きと五重塔の対比が良いと感じて撮った写真である。

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撮影の醍醐味: HELIAR 40mm F2.8 Asphericalレンズの魅力

奈良ローカル線の駅にて撮影

奈良ローカル線の駅にて撮影

最近になってコシナのHELIAR 40mm F2.8 Asphericalレンズを手に入れた。コシナの総合カタログには、このレンズの詳細が記載されいていて参考になる。

このレンズの紹介キャプションに

ヘリアタイプのレンズ構成をベースとしたコンパクトな準広角レンズ。絞り開放から安心して使える光学性能を確保しながら、凝縮感のあるレトロスタイルの外観を持つ機動力の高いレンズです。

とあり、レンズの外観がライカのオールドレンズを彷彿とさせるものがあり、使ってみてライカのレンズを使っているような心地よさがあった。外装は真鍮製でシルバーとブラックペイントの2種類ある。購入したレンズはブラックペイント(BP)であった。このレンズは重量が110gと軽く、ライカのマイナーレンズの一つである、Elmarit-C 40mm f/2.8レンズと開放値も同じで、パンケーキレンズのような扱いができて撮り回しがよい部分も気に入っている。

実際に奈良のローカルな路線の駅の一つを撮ってみた。この駅は斑鳩に近く、奈良っぽい雰囲気が良く出ている駅である。撮影に使ったカメラは、LeicaMMonochrom(Typ246)である。写りはしっかりとしていて、ボケ味もなかなか自分好みでよい。さらに法隆寺での撮影もしてきたので、また記事にしてみようと思う。

LeicaMMonochrom(Typ246)+HELIAR 40mm F2.8 Asphericalレンズ

hasselphoto201909.hatenablog.jp

 

hasselphoto201909.hatenablog.jp

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台風の進路が大きく変化した

今後の台風の進路(ウェザーニュースより画像を引用)

予想進路が徐々に変わってきた。当初は本州横断だと思っていた台風の進路が、一旦和歌山沖に進路を変えたと思ったら、突如三重県に向けて、というか近畿圏に向け北上するようである。今回の台風は進むスピードがとにかく遅いと思う。しかも予想しづらい進路となっている。近畿に大雨の被害が出ないことを祈るばかりである。

雨の日の法隆寺五重塔

各地の寺院もこの台風に備え、公式サイトに拝観に関する情報をアップしている。法隆寺についても8月30日に「台風10号接近に対するお知らせ」というタイトルで台風10号の接近にともない拝観を中止させていただく場合がありますので、お越しの際は前もってご確認いただきますようお願い致します。」というお知らせがアップされている。是非とも事前にご確認いただきたい。

撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Nikkor P.C. 85mm f/2(LTM)

【法隆寺公式サイト】

https://www.horyuji.or.jp

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台風が近づいてきた

雨の法隆寺回廊にて

久々のブログ更新。台風10号が近づいている。今回は大型で中心気圧が935hPaとされる。この写真は結構前に撮った法隆寺の境内であるが、数日後にはこのような大雨になるのであろう。そんなイメージを先行して載せている。どうか家屋の被害などが各地で最低限に止まるように願っている。本州を横断するような進路を取るようで心配である。

撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/1.5(旧RFコンタックス)

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薬師寺鬼追式_2024(その6)

薬師寺鬼追式_2024(その6)毘沙門天の登場

薬師寺鬼追式の最後のシーン。金堂前で松明を持ち激しく暴れまわる鬼たちを薬師如来の御力を受けた毘沙門天が鎮めるところ。これで鬼が退治され退場する。薬師寺の「花会式」(修二会=しゅにえ)の最後を締めくくる儀式「鬼追式」がこれで終了。この儀式があって、新しい年度が始まる。そして一年間の溜まった悪い気を祓う。奈良県民の生活サイクルの一つのように感じる儀式である。

薬師寺の鬼追式の終わり(冠木門の提灯)

鬼追式が終わり帰途に着く。写真は冠木門の薬師寺の名が入った提灯を撮影。薬師寺は近鉄西ノ京駅から歩いて2分ほどのところにあり、日本でおそらく最も駅近な寺院である。

撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Leitz Summarit 50mm f/1.5

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