今週のお題は「うるおい」である。僕にとって心を癒される場の一つに法隆寺がある。飛鳥時代の建造物がそのまま残る寺院であり、先人たちの素晴らしい技術を感じずにはいられない空間である。特に興味深いのは法隆寺金堂である。建築様式は法隆寺境内の中でも古く、二重基壇の上に建物が建てられているのも飛鳥時代の大きな特徴である。金堂内には著名な釈迦三尊像が中央に鎮座し、アルカイックスマイルで参拝者を出迎えてくれる。さらに四隅には四天王像が並ぶ。個人的にはこの四天王像に最も興味を惹かれ、また参拝していて心の「うるおい」を感じる。
法隆寺金堂の四天王像は、現存する日本最古のそれであり、4体とも頭と体を通してクスノキの一本造である。頭にはそれぞれ豪華な宝冠が付けられている。東大寺戒壇院などで見かけるその他の四天王像がそれぞれ個性的な表情を見せるのとは違い、法隆寺金堂の四天王像は4体とも直立し、眉をひそめ、口を閉じていて無表情に近い。また、4体とも手首を紐で縛る特殊な姿をしていて、他に例を見ないスタイルである。
その他、僕自身が最も注目するのは、四天王像それぞれの足元に存在する邪鬼である。他の四天王像の場合、邪鬼は踏みつけられていて、苦痛な表情をしている。ところが法隆寺の邪鬼は少し雰囲気が異なる。持国天の足元の邪鬼は牛のようである。また増長天の邪鬼は一角獣のようでもある。踏まれている感じもなく、四天王を乗せている感じの印象で面白い。上宮王家の人々は、どういった思いでこの四天王像を造らせたのだろうかと不思議に思う。およそ邪鬼という感じがしないし、四天王像それぞれが踏みつけている感じでもない。四天王たちの持ち物もスケールの大きいものが多く、この部分もよく観察してみると興味深い。
心にうるおいを持たらす古刹の法隆寺西院伽藍。中でもあまり知られていない金堂の四天王寺像に関して触れてみた。
撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Leitz Xenon 50mm f/1.5
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