2019年の秋に、入江泰吉記念奈良市写真美術館にて、「鬼海弘雄 PERSONA 最終章」展が開催され、その中で、写真家の百々俊二と鬼海弘雄さんの対談が行われた。僕はその時興味があって、この対談を聞きに行った。対談内容は大変面白いものだったが、鬼海さんの体調が対談中ずっと気になっていた。当時、癌治療で療養中ということだったが、対談が終わり、最後に写真集など書籍を買う際に、購入者全員にサインをされていた。結構人が並んでいて、皆サインをもらい嬉しそうにされていた。僕も本音を言えば写真集を購入して、サインをもらいたかったが、憔悴しきっていた鬼海さんが目に入り、エッセイ集は買ったが、サインをもらうのは止めた。この時、随分と体調が悪かったのだと思う。しかし、写真家の思いと来館者への配慮もあってか無理をされていたに違いない。僕はその時気の毒でならなかった。