古都の名残を求めて

古都の名残を求めて

古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

小川晴暘のモノクローム写真作品:「ちょっとした夢」

奈良県庁前で芝を食べる鹿たち

 

今週のお題「ちょっとした夢」。

少し前に久々に写真展を観に行ってきた。場所は奈良県立美術館で、あまり混むことがない穴場の美術館である。この近くには、奈良県庁がある。一枚目の写真は、奈良県庁前で芝をゆったりと食べている牡鹿を撮影したものである。この県庁と県道を挟んで奈良公園と興福寺がある。不定期ではあるが、奈良公園の鹿たちは、芝を求めて県道を渡り、県庁へやってくる。今回は偶然その時間帯に鹿たちにここで出会えて写真が撮れた。

小川晴暘のモノクロームを中心とした写真作品展

飛鳥園とは、大正11年(1922年)に朝日新聞社に在籍していた写真家、小川晴暘が会津八一の熱心な勧めを受け、仏像など文化財の撮影を行うため創業した写真店である。その後『室生寺大観』『法華堂大観』などを発刊し、著名な写真作品を残してきた。この写真展で最も印象に残ったのは、写真家小川晴暘が撮影した法隆寺百済観音の右手を撮影した作品と東大寺法華堂の伝月光菩薩像の全身を写した写真の二作品であった。

奈良の写真家と言えば入江泰吉が有名であるが、個人的には、小川晴暘のモノクローム仏像写真の方がずっと好みである。小川晴暘は仏像を撮るときに、鏡を巧みに使い、仏像の陰影を太陽光で撮るようにしていた。後年の写真家は、電球によるライティングが多く、太陽光の淡く柔らかい陰影には勝てないと感じる。伝月光菩薩像や新薬師寺金堂の十二神将・伐折羅大将像の顔をアップにして撮ったポートレート?も大変表情が美しく、陰影もバランスが良く印象深い。自然な太陽光の成せる業だと思う。自分のちょっとした夢は、小川晴暘のような太陽光を使った仏像写真をいつか撮ることである。実現しそうにはないが、気持ちだけでもモノクローム写真をコツコツと撮り続けることである。

現在この時と同じ内容の写真展「小川晴暘と飛鳥園 一〇〇年の旅」が、東京の半蔵門ミュージアムで11月24日(日)まで開催している。お勧めの写真展である。

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