古都の名残を求めて

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古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/1.5レンズの魅力

LMM(Typ246)+Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/1.5レンズと純正フード

Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/1.5レンズで撮影した雨の日の法隆寺西院伽藍

Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/1.5のレンズ構成

最近なかなか良いのではと思っているレンズの一つにTコーティング付のCarl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/1.5レンズがある。このレンズは、有名なツァイスのルードヴィッヒ・ベルテレによって生まれた。ルードヴィッヒ・ベルテレは、ローデンストック社、エルネマン社をへてツァイス・イコン社に入社した人物で、エルノスターとゾナーは彼の名を不朽のものとした。彼は、それ以前に発表していた球面収差や色収差をはじめ歪曲の目立ったSonnar 50mm f/2レンズを改良し、上記のレンズ構成図のように後部レンズを三枚接合し、第四接合に小さい半径をとりいれた。こうして、球面収差の補正にも成功したSonnar 50mm f/1.5レンズが1934年に発表された(『カール・ツァイス:朝日新聞社』を参照)。以下、このレンズのレンズ構成に関する記述を随分前に購入した『写真工業』という古いカメラ雑誌からも引用する。また上記レンズ構成図は、『写真工業』に載っていたものを改めて僕がイラストレータでトレースしたものである。

 代表的なレンズタイプの一つとして位置づけられるゾナーは、三枚接合を中玉にした特異な3群構成が特徴といえる。その中玉は薄い空間になるはずのところを低屈折率の凸レンズとし、高屈折率の凸凹で挟んだ形の3枚接合の凹メニスカスとなっていて、この構成図を見ることでゾナータイプであることは容易にわかる。

 トリプレットと同じ3群玉であることは、構成枚数が多いにもかかわらず、空気との界面数が少なく、それだけ内部の反射も少なく、コントラストの低下やゴーストの発生を抑え込むことのできる点で有利となる。収差補正をまとめる後玉を2~3枚接合にしたのも特徴的で、球面収差やディストーションを補正している。

 レンズのコーティングが開発されていないため、レンズの設計に自由度が乏しかった時代に、このような巧みな貼り合わせを組み入れての設計に独自性が発揮されていることで、ベルテレは天才的な設計者と評されている。

僕はたまたまこの記事を見つけたことで、 Sonnar 50mm f/1.5レンズの良さを再発見した。記事は戦前のノンコーティングのことを対象としているが、所有の Sonnar 50mm f/1.5レンズは珍しいアルミ鏡胴で、Tコーティングあり、写りがシャープで重さも軽く撮影には便利である。コーティング加工されたゾナーは、1936年製からとされる。もう一つ同じシルバークローム鏡胴の Sonnar 50mm f/1.5レンズを以前持っていたが、両方を比較したら二重像のピント合わせはアルミ鏡胴のこの個体の方がピタッと合っていた。いずれも価格は5万円以内とコスパが良い。これだけの写りをしてくれれば、高騰したライカの高価なレンズ群を用いなくてもいい写真は撮れると感じる。カメラはLeicaMMonochrom(Typ246)にライカにRF用のコンタックスレンズが付けられる50ミリ専用のカプラーがあれば充分である。

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