古都の名残を求めて

古都の名残を求めて

古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

法隆寺東院夢殿の八角柱

法隆寺東院夢殿の八角柱

法隆寺東院伽藍の中心にあるのは、独特なシルエットを持つ夢殿である。内外二重に8本の八角柱を巡らす構造で、その名も美しく、奈良時代に建立された聖徳太子(厩戸王)を供養した建造物である。八角形という特殊な形式は、興福寺北円堂(藤原不比等)、奈良県五條市にある榮山寺八角堂(藤原武智麻呂)など、故人を偲んで構想された仏堂に共通しているという。

この夢殿に安置されているのが、聖徳太子等身とされる救世観音菩薩像である。先日まで一般公開されていた。救世観音菩薩像の光背はその意匠が大変美しいが、百済観音像の光背が本体とは別に竹にデザインされた支柱に光背が接合されて立っているのとは違い、観音菩薩像の後頭部に釘で打ち付けられている。一説では、聖徳太子の怨霊を封じ込めるためともいわれる。大変神秘的な仏様である。

現在法隆寺東院伽藍のある場所は、かつて斑鳩宮があったところであり、厩戸王が晩年を過ごした地である。かつては蘇我氏や推古天皇との確執などから距離を置くためにこの地に移ったと言われていたが、最近の研究では、古代の交通の要衝地であった斑鳩を外交などのために積極的に活用するために移ったとされている。さらにこの場所は創建法隆寺とされる若草伽藍からも距離が近く、斑鳩の二人の貴公子が眠っているとされる藤ノ木古墳からも近い。藤ノ木古墳から見つかった豪華な装飾品を見る限り、厩戸王が当時先進的であったと思われる斑鳩への外交ルートを強化して、倭国の政治や経済の発展を考えていたであろうことは想像に難くない。

撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Carl Zeiss Jena Sonnar 50mm f/2(沈鏡胴)

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