古都の名残を求めて

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古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

『写真家ドアノー/音楽/パリ』展へ行ってきた

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『写真家ドアノー/音楽/パリ』展のフライヤーとポストカード

先日、フランスの写真家ロベール・ドアノーの音楽に因んだモノクロームのゼラチン・シルバープリント作品約200点を展示する写真展へ行ってきた。1930年代から1990年代にかけて撮影されたものであった。パリの街角に溢れるシャンソンやジャズなどの音楽シーンを題材に素晴らしいモノクローム写真群が続き、しばし時を忘れて見入っていた。

多くの作品の中で、僕が最も興味を持ったのは、流しのアコーディオン弾きを追って、様々なシーンを展開するルポルタージュであった。美しいアコーディオン弾き”ピエレット・ドリオン”と彼女に寄り添って行動する歌うたいの”マダム・ルル”、二人で写っているシーンもあれば、ピエレット・ドリオンが酒場の客の傍で演奏しているシーンもあった。今回の写真展のフライヤーの作品はそのシリーズの一つであり、展示を見ていてそのことに気付いた。タイトルは「音楽好きの肉屋」であった。この作品群はいずれも1953年2月の作品であった。このシリーズの写真作品の最後にドアノーの撮影したネガのコンタクトシートが作品と同列に展示してあり大変良かった。この展示で購入したポストカード(上の写真の右下「運河沿いのピエレット・ドリオンとマダム・ルル」)の作品も、5枚ほど撮った中からこのネガを選んだのかと分かる展示構成はよく考えられていると感じた。

パリの中心地というよりは、場末の酒場で撮影したこのシリーズは、ドアノーの一般庶民に寄り添った視点であり、その部分が僕の興味を惹いた。僅かな日銭で生計を立てて暮らす美しいアコーディオン弾きのピエレット・ドリオンのイメージは、藤沢周平の時代小説によくみられる市井ものの視点と似通っていて、僕はこのシリーズが気に入ってしまった。他にもクラリネット工場で働く職人シリーズも良かった。

以前、写真家のセイケトミオさんが展示をされていた「Julie-StreetPerformer」展の作品群も今回のドアノーのシリーズと同じ視点であり、僕はセイケさんの作品の中で最も興味を持っていた。残念ながらこの写真展には行けなかったが、ブログにアップされた作品をその時は楽しみにしていた。

今回の展示では、1932年にドアノーが初めて買った二眼レフの「ローライフレックス」も展示されている。美術館「えき」KYOTOでの展示期間は12月22日(水)までである。

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