薬師寺境内にある東院堂は鎌倉時代の建造物である。再建された建造物の多い薬師寺の中にあっては、古都の名残を感じさせる建物である。僕はこの東院堂にいらっしゃる白鳳時代の傑作と言われる聖観音像にいつも感動を覚える。仏像の薄い衣の襞(ひだ)から足が透けて見える彫刻法がインドのグプタ朝の影響を受け、どことなく異国情緒が漂う仏様である。白鳳時代の仏像群はその前の飛鳥時代の荘厳な雰囲気の仏像群と違い、若々しく生き生きとした表情をしている。その中にあってこの聖観音像はより瑞々しい表情を持ち、洗練された美術的な美しさを感じる。東院堂の中では写真が撮れないので、外からならいいですよとお聞きしてこの写真を撮影した。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summicron 50mm f/2(2nd)。