古都の名残を求めて

古都の名残を求めて

古都奈良の雰囲気の残る場所をフィルムやデジタルで記録したモノクローム写真のブログです。

雨に濡れた薬師寺の礎石

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雨に濡れた薬師寺の礎石

いつもは目立たない場所にある薬師寺の礎石群。この日は大雨で、礎石の表面が雨の反射でひと際目に付いた。しっとりとした雰囲気が古都の名残を感じさせる。撮影機材は、ライカMモノクローム+Leitz Elmarit 40mm f/2.8レンズ。このレンズの柔らかな光の描写がなかなか良いと思う。

大雨の日の薬師寺金堂

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石畳に映る薬師寺金堂のシルエット

このところ大雨の日が続いている。そんな中、薬師寺へ行く機会があり雨の日の撮影をした。夏は太陽光が強すぎて、なかなかいい写真が撮れない。したがって雨の日はいい被写体に出会うチャンスが多い気がしている。ただし、この日は雨の量が半端ではなく、撮影自体も大変であった。ズボンはずぶ濡れになりながら、何とか撮影できた感じであった。薬師寺の中門で雨宿りをしている際にふと目に入った金堂のシルエット。きれいに石畳の舗装がされている境内中央に、大きな金堂が雨に濡れた鏡面に映っていて美しいと感じた。撮影機材は、ライカMモノクローム+Leitz Elmarit 40mm f/2.8レンズ。

薬師寺東塔の存在感

 

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存在感のある薬師寺東塔

薬師寺という寺院は、もともと藤原京にあった官立の寺院である。天武天皇が建立を命じた寺院には、もう一つ大官大寺(平城京では大安寺)がある。文献資料によれば、680年に始まった建設事業は、天武天皇の死去後は持統天皇が引き継ぎ、698年に完成したとされる。710年の平城京遷都で藤原京の様々な施設も移ることになり、薬師寺も718年に伽藍を平城京に移したと記録され、藤原京の薬師寺は「本薬師寺(もとやくしじ)」と呼ばれるようになった。現在も橿原市に礎石など本薬師寺の跡が残っている。東塔は、移転当時から寺院にある唯一の建物とされる。

最近の研究では、現存する東塔の柱の配置や間隔は本薬師寺跡で出土した東塔跡とよく似ていて、柱を同じ配置・間隔にする建築は異例であることを指摘する建築の専門家もいる。東塔には横方向の木材を2本並べて柱に通す「二重頭貫(にじゅうかしらぬき)」という中国の唐でみられた新しい工法が採用され、国内の古い建築にはみられないものらしい。薬師寺は本薬師寺の大まかな形は継承しつつも、中国の最新の工法を取り入れるなど建設当時の様々な新しい技術を導入したのではないかとされている。

現在薬師寺を訪れると、東塔内に入ることはできないものの、特別開扉により初層(1階部分)の扉が開けられ、内部を見ることができる。まだ仏像を納めていないため、中心に立つ直径約90センチの心柱(しんばしら)が見られる。東塔を支える基壇は、創建当初から残る基壇を覆うように新しい基壇を作ったが、心柱だけは宗教性を重んじ、創建当初の礎石にのせているということである。

1300年の歴史、あるいはもっと以前からの時間の長さを考えると、薬師寺東塔の存在感は圧倒的なものがあると感じる。幾多の災害を乗り越えて、現在まで唯一薬師寺で残っているという事実は素晴らしい。これから先さらに1000年、2000年とリペアを繰り返しながら東塔がこの地に建ち続けることを願ってやまない。

最後に2012年に東塔の解体修理が公開されたときに、僕が東塔の上層階から撮影した薬師寺金堂の屋根部分をの写真を紹介する。屋根に鳩が二羽止まっているのが見える。

Two pigeons by Hiro .M on 500px.com
この写真は2012年に500pxに投稿したものである。撮影機材はNikon D700+Nikon AF-S Nikkor 70-200mm f/4Gである。

HELIAR classic 50mm f/1.5レンズ

久々に写真家セイケトミオ(清家冨雄)さんの写真作品をネット上で拝見することができた。9月にコシナから「HELIAR classic 50mm f/1.5」レンズが発売される。その写真作例にセイケトミオさんの作品が5点載せられている。このレンズの説明をコシナのサイトから引用する。

レンズ構成はヘリアタイプをベースとする3群6枚で、F1.5の大口径を実現。現代レンズにないクラシカルな写りを追求し、あえて各種の収差を表出させる光学設計を採用しています。飛び道具的ではなく飽きのこないボケ味に加え、残存させたコマフレアとレンズへのシングルコーティング仕上げにより、極めて個性的な絞り開放描写が得られます。この傾向は絞り込むことで減少し、絞りF4からは他のフォクトレンダー製VMマウント50mmレンズと同等の性能を発揮します。

とある。開放付近の写りには、コマフレアを残存させ、ライカのオールドレンズを思わせる表現に近づけたようなイメージである。レンズ構成を見ると、ライカのヘクトール50㎜ f/2.5レンズを思わせる。二枚貼り合わせの三群という構成が見逃せない。興味深いレンズだと感じるし、写真作品を見ていると暗部の粘りが美しいと僕は感じる。セイケさんの作品を見て、もう閉じてしまわれたブログ「b-road」を思い出してしまった。

僕が持っている写真集の一つに、セイケトミオさんの「PORTRAIT OF ZOE」がある。日本で偶然出会った女性Zoeを東京・パリ・ニューヨーク・ロンドンで5年にわたって撮り下ろしたモノクロームポートレート集である。主にSummilux 35mm f/1.4レンズとNoctilux 50mm f/1.0レンズで撮られている。特に光の捉え方が素晴らしいと感じる写真集である。

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セイケトミオ「PORTRAIT OF ZOE」写真集

『聖徳太子没後1400年 入江泰吉×工藤利三郎「斑鳩」展』を観て

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入江泰吉記念奈良市写真美術館の展示情報(高畑町の掲示板にて)

先日、入江泰吉記念奈良市写真美術館にて開催している『聖徳太子没後1400年 入江泰吉×工藤利三郎「斑鳩」展』を観に行った。工藤利三郎は明治期の写真家で、その作品には、焼損する前の法隆寺の金堂壁画の写真など大変貴重なものが多い。奈良の写真家入江泰吉の写真作品は今までもたくさん観てきたが、今回の斑鳩に的を絞った展示も新たな視点でとても良かった。

二人の写真を見ていて強く感じたことは、写真の記録としての側面の重要性であった。写真家の写真というとどうしてもアーティスティックな側面が重視されがちであり、現代社会においてはその要素が写真家の評価において重要であることは否めない。売れる写真家の写真はどうしても500pxでよく見かけるような派手な色遣いのランドスケープ、美しすぎるポートレートなど枚挙に遑がない。しかし、僕自身は工藤利三郎や入江泰吉に見られるようなその時代の記憶、記録としての写真が好みであるし、重要だと思っている。二人が生きた奈良は、時代が何十年も違う。そしてそこに映る奈良もやはり時代をよく反映していて興味深い。さらに連続性がある点も見逃せない。僕はこの展示において、改めて写真という媒体の記録という側面が大切だと感じた。その時にしか撮れない写真があり、人々の生活がある。同じ建造物でもわずかに表情が違ってくる。この比較対象としての写真作品が並ぶ今回の展示は大変良かったと思う。撮影機材:LeicaMMonochrom(Typ246)+Jupiter-8 50mm f/2である。

※工藤利三郎に関する記事は以下の書籍にも載っています。参考までに。

Leica C型とHektor 50mm f/2.5レンズ

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Leica C型とHektor 50mm f/2.5レンズ

少し前に格安で手に入れた使い込まれたLeica C型カメラ。距離計がなく、スナップ専用のカメラという感じである。大変軽いため、持ち歩きには便利である。この個体は長く使っていなかったのか、初めはフィルムの通りが悪く少し手こずった。このところ毎日フィルムの巻き上げ動作を繰り返しながら常に機械を動かすようにしている。

写真のレンズは、ライツのHektor 50mm f/2.5レンズである。1930年代の作りでシリアルナンバーはない。もともとLeica A型に固定されていたものを距離計連動式に純正改造したものである。鏡胴の根元とノブ裏に「0」の番号が刻印されている。ヘリコイドに無限遠ストッパーは無く、ニッケルタイプの全回転式である(ショートヘクトールではない)。鏡胴の擦り傷は酷いが、光学系は状態が良い方である。実際にライカMモノクロームで撮影してみたが、写りは独特な柔らかさがあるものの、結構前ピンであった。まだフィルムで撮影できていないが、Leica C型で無限遠撮影してみてピントの具合を確かめたいと思っている。僕の持っているC型にはマウント部分に「0」番が刻印されているので、このHektor 50mm f/2.5レンズとマッチするはずである。できれば、メートル表示の長い棒の形をした精度が高いと言われる距離計が欲しい。

薬師寺大門付近の土壁

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薬師寺大門付近の土壁

薬師寺與樂門から道路沿いに東へ進んで行くと、大門付近の歴史ある土壁が長く続く。こちらの経年変化も激しく、冠木門付近の土壁とは表情が違う。写真は側面から撮影。右手には自転車に乗って通り過ぎた人が写り込んでいる。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summilux 35mm f/1.4(2nd)レンズ。

薬師寺與樂門

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薬師寺與樂門にて

薬師寺の北の玄関口といえる與樂門の朱塗りの壁を撮影。金具と釘隠しがアクセントとなっている。近鉄西ノ京駅からここへは歩いて3分ほどである。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summilux 35mm f/1.4(2nd)レンズ。このレンズの周辺光量の落ちが雰囲気を出している。

薬師寺冠木門近くの土壁

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薬師寺冠木門近くの土壁

薬師寺から唐招提寺へ向かう途中に見られる土壁。この土壁は距離が長く、古都の名残を感じさせてくれる場所である。以前、この壁を調査している方々がおられた。もしかしたら近い将来、この壁を修築するのかもしれないと感じた。ヒビが入っている個所や、土壁自身が大きく剥がれてしまっているところ、人為的な線が引かれてしまっているところ、様々な表情を見せてくれている興味深い壁である。この経年変化も現在の奈良を表す進行形の一瞬間なんだと感じる。撮影機材は、ライカMモノクローム+Summilux 35mm f/1.4(2nd)レンズ。最近このレンズを使い出したが、とてもいい描写をすると感じている。基本50mmレンズが僕の好みだが、35mmはこういった距離のある被写体に向いている。ズマロン35㎜ f/3.5レンズとも違う柔らかい描写傾向であると思う。

薬師寺東院堂の功徳箱

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薬師寺東院堂の賽銭箱

写真は薬師寺東院堂の賽銭箱である功徳箱。ここには有名な白鳳時代の仏像である『東院堂聖観音像』が安置されている。顔が美しく気品を感じる聖観音像にお参りすると心が洗われるようである。この功徳箱は大きくて、いつも目に留まる被写体である。手前の床板の木材の木目も美しい。格子戸の奥には聖観音像が控えていて以前は外から聖観音像を拝むことができたが、最近は扉が閉めっぱなしになっていて外から拝めない。おそらく写真撮影に関わる部分で閉められているのかもしれない。撮影機材は、ライカMモノクローム+Elmar 50mm f/3.5(L)ニッケルタイプ。